パナソニックは6月13日、ビジネスイノベーション本部が取り組む新規事業について説明会を開催した。IoT、AI、ビッグデータを活用した、3つのプロジェクトについて、どんなデータを集め、AIを活用しているのかなどについて紹介した。
ビジネスイノベーション本部は、2017年4月に新設。新たなビジネスモデルの創出に向けた技術開発や人材育成を推進している。パナソニックビジネスイノベーション本部事業開発センター所長の島田伊三男氏は「AI、IoT、ビッグデータの3つは、それこそ毎日でも耳にするキーワードだが、データが集まってもその99%はゴミで、その中から宝物である情報を取り出すにはお金と時間がかかる。いかにして不要な情報を捨てるか、そして、情報を狙って取りに行くことにこだわる必要がある」と、現状を説明する。

なぜ情報が取り出しづらいのかというと、解析に耐える情報が撮れていない、サイズが大きくて扱いにくい、映像を情報に変える技術が不十分などの課題があるため。パナソニックではデジタルカメラ「LUMIX」やデジタルレコーダー「DIGA」で培った撮像、映像処理や圧縮、伝送技術に最先端のセンシング、AI技術などを組み合わせることで、これらの課題を解決。新規事業に生かしているという。

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パナソニックセンター東京内に取り付けている「Vieureka」

紹介されたのは、AIセンシングを使って見えなかった情報を入手する「PaN/Vieureka(パン/ビューレカ)事業」、暮らしと連携したAIセンシングにより人の行動を可視化する「スマートエイジングケア事業」、取得したデータを効率くよく保管する「コールドデータセンターサービス事業」の3つだ。

PaN/Vieureka事業は、画像エッジコンピュータによるAIセンシング&サービスが事業コンセプト。Vieurekaは2017年6月、PaNは2017年3月に開始しており、実用化されている。

Vieurekaは、IPカメラを使ったIoTデバイス。カメラ内で人物検出と年齢性別分析ができ、認識結果のみをクラウドに直接送信できる。これにより、店舗の入口に設置し、来場客の性別や年齢層を確認したり、滞留時間、売場到達率などの分析に役立てられる。

すでに、神奈川県横浜市の「Tsunashima サスティナブル・スマートタウン」に導入し、街に訪れる人の数や性別、年齢を見える化しているほか、トライアルカンパニーと提携し、人数、属性のカウントや店内回遊率の分析などに利用されている。
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Vieurekaカメラを使って、来場者を確認。性別や年代を判別する。プライバシー保護のため、四角い形と色で表している 。

PaNは、観光地やイベント会場に設置したカメラを使って撮影ができ、自分の写真のみをダウンロードできるというカメラシェアリングサービス。カメラを持たずに記念撮影ができることに加え、高所や難所など、ベストポジションから撮影できることがポイントだ。
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パナソニックセンター東京でもPaNを使って記念撮影ができる。

パナソニックビジネスイノベーション本部事業開発センターPaN/Vieurekaプロジェクト総括担当の宮崎秋弘氏は「PaNは、2018年6月現在18カ所に常設されているが、撮影箇所が増えればネットワークでつながっているため、人気スポットや混雑する時間帯などがわかり、データを活用できる。2020年末には遊園地や観光地、寺社仏閣など500カ所に設置することを目標にしている」とコメント。Vieurekaについては「現在の店舗はPOSデータなどから、商品が売れた結果しかわからない。Vieurekaを使えば、商品をどうやって選んだのか、またはなぜ選ばなかったのかという行動属性が把握できる。ビッグデータとして提供していきたい」(宮崎氏)とした。

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ルームセンサーを使って室内の様子をセンシングしている画面。室内にて眠っているのか、起きているのかがわかる。

スマートエイジングケア事業は、ルームセンサと対応のエアコンなどを使った見守りサービスを提供。パナソニックでは高齢者を見守るだけでなく「社会復帰、自立支援につなげる」(島田氏)ことまでを意識しており、IoTとAIを活用した科学的根拠に基づく自立支援介護のプラットフォームの実現を目指している。

ルームセンサーを使用しているため、センサなどを身につける必要がなく、1日の生活リズムを把握。睡眠状況やトイレの利用状況などから、ケアプランを立てられる。2016年6月に事業を開始し、現在介護施設など約1300室に導入。システムで安否確認することで、業務効率化にもつなげているという。

パナソニックビジネスイノベーション本部事業開発センタースマートエイジングケアプロジェクト総括担当の山岡勝氏は「介護のやり方を根底から変える。先進技術を使えば生活パターンは読み解ける。予後に向けた支援計画を立案していきたい」とした。

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光ディスク技術「freeze-ray」。1枚のディスクに300Gバイトのデータを保存できる。

コールドデータセンターサービス事業は、集めたデータを将来きちんと使えるように、賢く管理する光ディスク技術「freeze-ray」を手がける。freeze-rayは1枚のディスクに300Gバイトのデータを保存でき、耐久年数は100年。「常温で管理でき、コストを抑えられる。ランダムアクセスに対応しているため、データも探しやすい。HDDに比べるとコストは8分の1程度になる」(パナソニックビジネスイノベーション本部事業開発センターコールドデータセンターサービスプロジェクト総括担当の川合啓民氏)とそのメリットを説明する。

川合氏は「AIによるアノテーションを自動付与することで、データを探しやすく賢く保存する。AIの力を使ってサービスを成長させていきたい」と今後を見据える。
イノベーションビジネス本部では、「ゼロからイチへと踏み出す活動に挑戦している」(島田氏)とし、このほかのプロジェクトも実施しているとのこと。島田氏は「Vieurekaをスマートエイジングケアプロジェクトに活用するなど、3つのプロジェクトを融合させていきたい」と今後の展開を話した。