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「ビリオネア」と聞いて、あなたはどのようなイメージが浮かぶだろうか。高齢の社長、強面の投資家、怖いもの知らずの若きIT起業家……。メディアを通じて伝えられる彼らの顔はさまざまだ。

ところが、データを見てみると別の姿が見えてくる。PwCのパートナー、ジョン・スヴィオクラは同社でフォーブスの「ビリオネア・ランキング」に基づく調査を実施。その結果、ビリオネアに対する誤解がある一方で、じつは習慣と継続次第で誰もが身につけられる「ビリオネア・マインド」があることに気づいたのだ。

彼はそれを共著『10億ドルを自力で稼いだ人は何を考え、どう行動し、誰と仕事をしているのか』(ダイヤモンド社刊)の中で以下のようににまとめている。

まず、ビリオネアに関する誤解は7つ判明している。1. 若くして成功した、2. IT長者である、3. ブルー・オーシャンの開拓者、4. 一発当てた人、5. モラルが低い、6. 一夜にして大成功を収めた、7. 天賦の才能に恵まれている、という7点である。

昨今、インターネットの普及とデジタル化によって多くのIT起業家が成功しているのは事実だ。今年のランキングで1位に輝いたアマゾン・ドットコムのジェフ・ベゾスや2位のビル・ゲイツ、5位のマーク・ザッカーバーグなどは1や2に該当するだろう。しかし、それぞれ創業期にかなり苦労していることはあまり知られていない。

スヴィオクラが指摘するように、「グリット(根性)」があったから成功したのだ。そして、そういったビリオネア・マインドは、個人はもちろん、組織にも取り入れることができるという。スヴィオクラにその方法を聞いた。

──シリコンバレーでは失敗した経験を持つ起業家を評価する傾向にありますが、成功し続ける起業家に投資した方がよいという指摘もあります。ビリオネアは「失敗」をどう捉えているのでしょうか。

多くの人はそういった点に惑わされがちです。「失敗するのはいいことだ」という甘言に踊らされるのではなく、成功を目指すグリットを持つことです。挑戦しなければ、成功などできません。ただ勝つことだけが目的になってしまうと、無意識に自分の中でハードルも下げてしまい、さらなる成功をもたらす限界まで挑戦するようなこともないでしょう。

──組織に取り入れることができる考え方や方法論などはあるのでしょうか。

ビリオネアたちが持つ「創造的実行力」は、組織に取り入れられるのではないでしょうか。彼らは「何をするか」「それをどう実行するか」をセットで考えます。多くの人は考えと行動を分けるものです。でも、じつはこれは誤りなのです。なぜなら、「何をするか」で「どう実行するか」が決まることが多いからです。

大企業では優れたアイデアが出てきても、通常のプロセスで行うことを前提に考えがちです。その結果、せっかくのアイデアも結局は台なしになります。

「ふだんのやり方でできないか」「いつもの業者にできるか、聞いてみよう」「もうすでに契約している業者がいるから」「上に掛けあわなくてはいけない」と妥協することになるからです。この時点ですでに数回妥協しているわけで、良い結果につながるはずがありません。「アイデア」と「実行」は密接不可分であることを理解する必要があります。

──経営者が社員から「ビリオネア・マインド」を引き出すには?

最も重要なのは、採用過程でそうした人材を見つけることです。外部から人を雇うときは、「起業家精神」を持つ人を採用すること。社内の人材を生かす場合は「反逆児」を探すこと。後者は社内の大勢とは異なる価値観を持っているからです。そうした反逆児たちには、資金や時間などのリソースを与えましょう。彼らは優れたプロセスがイノベーションにつながることを理解しているからです。

イノベーションを起こすのは人です。だからこそ、優れたプロセスを生み出すためにも、より多くの「反逆児」を育てた方がよいと言えるでしょう。

反論を許容できる企業文化が大事です。アート業界には「アンディ・ウォーホルの絵画を居間に飾りたい人は多いが、その彼らもアンディ・ウォーホルに居間にいてほしいとは思わない」という言葉があります。それと同じで、イノベーティブな製品をほしがる会社は多いですが、それを生み出す意志が強く、押しの強いイノベーターたちとは関わりたくないのです。それでは、イノベーションは生まれません。

──経営者にとっては難題でしょうね。

しかし、「牛がいなければ、牛乳は飲めない」のと一緒です。犬のように従順な社員ばかりなら楽かもしれません。でも、永遠に牛乳は飲めないですよ。